轻松读懂日语经典作品
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つきのまつやま
月の松山
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,451 字 · 41 页
六
桂は嗚咽した、「わたくしにはわかっているんです」
「お願いです、私がきっと慥かめてみますから」
「なにをですの」嗚咽の中で桂が云った、「なにを慥かめるんですの、あの方がどこに女のひとを隠しているかということをですか」
「そんなことを、お嬢さん」
「いいえ申します」桂は泣きだした、「あなただってそう思っていらっしゃるのよ、わかってますわ」
桂は泣きながら身を揉んだ。泰二郎は喘いで、桂のほうへ手を伸ばそうとしたが、唇を噛んで脇へ振向いた。桂の躯からつよく香料の匂いが立った。
泰二郎が長屋へ戻ったとき、彼の住居の前に孝也が立っていた。いつもはもっとおそく帰るのが例である、いつもより半刻も早いだろう。戸口の前に立っている孝也の姿を見たとき、泰二郎はとつぜん平手打ちをくったような驚きと同時に烈しい怒りにおそわれた。彼は大股に、孝也のほうへ歩み寄った。
「なんですか」泰二郎は云った、「私になにか御用ですか」
「灯がついたままだ」孝也は指さした、「灯をつけたまま留守にすることは禁じられている、でかけるなら消していってくれ」
六
「それだけですか」泰二郎が云った。
「それだけだ」