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むらのせいこうしゃ

村の成功者

佐々木 邦

「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页

青空文庫

「然うでしたかな」

「その前までは……いや、これは私の勘違いでした。汽車は予定より一年後れましたよ。それで矢張りガタ馬車の方が先です。失礼しました」

「何うも然うだと思っています」

と詰襟は安心した。

卓造君はこの三里の坂道を自動車で上ったり下りたりして角町に着く。それから又二里歩くと生れ故郷の山中村だ。もう一遍逆に言えば、山中村は角町へ二里、角町から○○町へ三里、真に辺鄙なところだ。汽車に乗るまでに都合五里の山路を登ったり降りたりしなければならない。山中村は名詮自性、山また山の中にある。

暑中休暇は親子兄弟を結びつける。卓造君が帰って数日すると、師範学校へ行っている弟の正次郎君が帰って来ることになった。晩の九時に着くというハガキだったから、卓造君は角町まで出迎えたが、待ちぼうけを食った。十時になっても弟の姿が乗合自動車の中から出て来ないので、諦めて引き返した。夏の夜道は苦にならない。矢張り師範へ行っている息子を迎えに行った人が道連れだった。

「何だい? 一人かい?」

と卓造君の父親は失望した。

「乗後れたのらしいです」

「小寺は?」

「小寺君も見えません。