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むらいちばんそうけいせん

村一番早慶戦

佐々木 邦

「冨士」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,468 字 · 34 页

青空文庫

未だ尋常三四年だったが、一夫さんのところなら行くわと答えた。無論まゝごとみたいな話だけれど、何うもそれが鶴子の頭に残っているのらしい」

「ふうむ」

「何となく君が好いんだ。若しあの時から今まで然う思い込んでいるのだとすれば、僕は重大な責任を感じる」

「…………」

「兎に角、僕は愚痴を零しながら、昨今の心持を理解して貰いたいと思って来たんだ。誠意を認めてくれるだろうね?」

「認めるとも」

「実はその後何かの切っかけで変心して、村一番になろうと思ったが、親父の計画通りにやっても、子供が不幸になるばかりだ。義兄は案外の道楽者で、姉は苦労が絶えない。義弟の方は申分ないけれど、姑がむずかしいものだから、郁子は泣いてばかりいる。僕だって鼻を咬まれるような騒ぎだから、これから先が思いやられる」

「因果だね、お互は。鶴子さんが来てくれる気で僕が貰う気でも、親同志の納得ってことは迚も想像がつかない」

「僕に一つ考えがある」

「何だい?」

「君もこのまゝ嫁を貰わないで待っている。鶴子もこのまゝ何処へも行かないで待っている」

「成程」

「両方で持て余すよ。僕の親父が我を折れば、君のところでも考えてくれるだろう」