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かきいろのかみふうせん

柿色の紙風船

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页

青空文庫

(これァいかん)

私は真先に、ラジウムの処分問題を考えた。この調子では、私の肉ポケットに入れて出ることは、明かに危険であると感じた。きっと出獄の前に、いまの二人が私の肉ポケットを点検するだろう。そのときこそ百年目に違いない。――私は至急に別なラジウムの隠し場所を考え出さねばならなかった。

「オイ丸田」と作業場で声をかけたのは五十嵐だった。

「昨夜は大したお客さまだったナ」

「うん」

「あの若い方を知っているかネ」

「背の高い男のことだろう。――知らない」

「知らない? はッはッはッ。馬鹿だなァお前は。あれは帆村という探偵だぜ」

「探偵? やっぱりそうか」

「どうだ思い当ることがあろうがナ」

「うん。――いいや、無い」

「う、嘘をつけ。おれが力になってやる。手前の仕事のうちで、まだ警察に知れていないのがあるネ」

「いいや、何にも無い!」

私はいつになく、この無二の親友の好意を斥けたのだった。いくら五ヶ年の親友だって、こればかりは打ち明けかねるというものだ。

それから私たちは、無言の裡に仕事をやった。それは私たちにとって珍らしいことだった。二人はこの仕事の間に、たとえ話がないにしろ、軽い憎れ口や懸声などをかけて仕事をするのが例だったから。