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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
結局は、栄蔵の顔を見た瞬間に直覚した通り金の融通で、毎月十円ずつ出してくれと云った。
凡そ一年も出してもらえたらと栄蔵は云ったけれ共病気の性をよくしって居る主婦は、とうていそれだけの間になおらない事を知って居たし、沢山の子供の学費、食客の扶助などで、中々入るから熟考した上での返事がいいと思って、又明日来てくれれば返事を仕様と云った。
夕食頃に、川窪の主人が帰ると、栄蔵の話をした。
「お君だって、あんな不義理な事をした事は何と云ったって悪いには違いありませんけど、病気で難渋して居るのを助けてやるのは又別ですからね。
親父だって、ああやって働けもしないで居るんだもの、どんなに気が気でないか知れやしませんよ、可哀そうな。
でも月々十円は中々苦しい。
夫婦は相談して、とにかく一月分だけは明日渡して、栄蔵の村の者へ貸してあるものがあるから、あれを戻す様に尽力してもらって、入ったものの中から出した方が相方都合がいいときめた。
「ああ云う病気は殆んど一生の病気なんですからねえ。
それをあの男は胸につくよりはいいなどと云って居るんですもの。
ほんとうにお君も惨めなりゃ、あの男だって可哀そうじゃあありませんか。