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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

あきれて口を噤んだ兄の前でお金は云いたいだけの事を並べた。

夜着をすっぽり被った中でお君は、妹につけつけ云われ目下に見られてされるままになって居る父親がいたわしく又歯がゆく思われた。

いつか芝居で見た様に小判の重い包で頬をいやと云うほど打って、畳中に黄金の花を咲かせたい気がした。

目の前に、金の事となると眼の色を変えてかかる義母の浅ましい様子を見るにつけ、田舎の、身銭を切っても孫達のためにする母方の祖母や、もう身につける事のない衣裳だの髪飾りなどをお君の着物にかえた母親が一層有難く慕わしかった。

上気して耳朶を真赤にし「こめかみ」に蚯蚓の様な静脈を表わしてお金は、自分でも制御する事の出来ない様な勢で親子を攻撃した。

「何ぼ私が酔狂だって、何時なおるか分らない様な病人の嫁さんに居てもらいたいんじゃありませんよ。若し、何と云っても自分の懐をいためるのがいやだと云うんなら誰の苦情があっても、子供のないうちにさっさと引き取らせて仕舞う。

頭の先から尻尾の先まで厄介になりながら、いい様に掻き廻すものをどうして置くわけがあるんですい。若し、恭二がかれこれ云う様なら二人一度に出すまでの事さ。