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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
発作的に息子を打って、そのパシッと云ういかにも痛そうな音をきくと、始めて我に帰った様になって、口をキーッと結んで打たれるままになって居る息子を見て涙をこぼす事があった。
お節は、疑がとけないであの様にするのだろうと思っていろいろ達のために云い解きをしたけれ共、
「そな事、よう分っとる、
云わんとええ。
と云ったきりである。
三人各々異った心の中に住んで、深い夜にこめられた様な明けくれがつづいた。
達は、自分が何のためにこんな辛い日を送らなければならないか分らなかった。
父親に喜ばれ様とこそ思え、あんなに目の仇の様にされ様とは夢にも思わなかった。
四五日すると達は、そうと母親に、
「父さんは、僕の来たのがいやなんですねえ、きっと。
だから僕はもう明日あたり帰りましょう、
居ても何にもならないから。
と云った。
けれ共、母親は、どうぞ居てくれとたのんだ。
「そら私も、お前の心は察します。
わざわざ優しくしてお呉れのにあんなひどくおしやはる心が一寸も分らん。
けど一寸の辛棒やさかいな、
大きい声や云われんが、
今度の病気が父はんの一番おしまいの病気かもしれへんさかいな。