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きりゅうつうしん
桐生通信
「読売新聞 第二七七五五号~第二八〇二五号」1954(昭和29)年3月11日~12月6日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,394 字 · 33 页
買継商というのは町のメーカーから織物を仕入れて全国の小売業者に卸す店のことである。Sは戦後の新興業者で商運は好調だった。好調なら倒産はしないはずだが、好調倒産という変ったこともありうることがわかったのである。
Sはさらに一大躍進をねらって計画的に倒産した。折しもデフレの声に、これぞ天の与え、倒産の機会と実行にかかり、この春から着々財産隠匿につとめ、ついに家財道具まで運び去り家族も疎開させたそうだ。こうしておいて五月ごろから不渡手形を乱発しておいて夏の終りに当人も行方をくらましたのである。
不渡手形をつかまされた業者は約百人、一人四、五万から五十万まで、合計千二百万円であったが、Sは小さな個人商店だからそこへ製品をおさめていた被害者も家庭工業的な小さなメーカーが主であった。
デフレだ不景気だという時節には倒産や休業の続出するのが機屋町の例で、中には計画的なのもよくある例だそうだが、それは多くの従業員をかかえて営業をつづけるよりも休業する方が損害が少ないというような場合で、Sのように計画的なのは珍しいそうだ。デフレを利用した犯罪である。被害者にしてみれば「デフレをも活用したか」