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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,815 字 · 79 页
八
「こんなものを、どうせ、始末におえません、見るたびにどうも、なんとも」庭師の老人はしきりにこぼしていた、「――どうしたってお庭につくもんじゃございません、いまに爺いが叱られるに定っています」
正篤はなにも云わず微笑していた。
まだ下屋敷にいるときから、悠二郎は諄く正篤に念を押した。今年こそ奥からやかましく云われるに違いない、しかし決して譲歩なさらぬよう、自分は祖父や準斎のほうを説得するから、あなたは奥に対してきっぱりした態度をとって頂きたい。早婚の害はとりかえしがつかないという、二十までは決して奥の寝所へははいらぬように。――正篤は約束した、そうして上屋敷へ戻った日の夜、改めて正篤のほうからその約束を繰り返した。
「決して譲歩はしない、大丈夫だ」
八
おれはまずおれ自身を生かしてゆく、そしてもし寿命がゆるすなら、世継ぎには健康な血統をのこすようにしたい。正篤はこう云って、さらに次のように続けた。
「おれはおまえのおかげでいろいろ世間を知ることができた、商人や日雇い人足や職人たち、そのほか一般の町家の暮しをずいぶん見てきた、――そしてそのときの政治が、善ければいいように、悪ければそのまま悪く、直接あの者たちの暮しにひびくことも、おぼろげながらわかるように思う、……今年の冬もいこう、来年も再来年も、いとまのある限り