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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,815 字 · 79 页
こう云ってそれぞれの下賜品をそこへ出した。
悠二郎は家へさがるとその足で、まっすぐに舟仙へゆき、まる三日のあいだ帰らなかった。酒を飲み、寝ころび、芸人を呼ぶかと思うとすぐかえらせ、夜中に起きあがって独りぶつぶつなにか云い、独りで冷酒を飲んだりした。
「三十人扶持の飼殺しか、くそうくらえ」
「どうしたの悠ちゃん、なにをそんなに苛々しているのよ、なにかあったの」
「うるせえ、おめえなんぞの知ったこっちゃあねえ」
「だって心配じゃないの、お酒ばかり飲んでるし、しじゅうじりじりしているし、お屋敷へは帰らないし、母ちゃんだってお父つぁんだって気を揉んでるわよ、ねえ、――云ってよ、なにか心配なことでもできたの、悠ちゃん」
「うるせえってんだ、いいから黙ってほっといて呉れ」
四日めに家から家扶の渡辺老人が来た。父も母も案じているからいちど帰るように、なにか話もあるということで、とにかく老人といっしょに帰った。
「この不所存者」父はいきなりこう叱りつけた、「――家をあけて舟宿などへ逗留するとはなにごとだ、家名にかかわるとは思わないか、おろか者」
「さあお詫びをなさい、悠二郎、もうこれから決してこんなことは致しませんって」