轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

「文章世界」1913(大正2)年1~2月、1914(大正3)年5月~1918(大正7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,569 字 · 222 页

青空文庫

と小父さんは高い帳場の上に居て言った。

「庖丁、庖丁」

と奥の勝手口の方を指して呼ぶものもあった。

姉さんや下女までそこへ顔を見せた。捨吉は帳場の側へ行って立って、皆の激しく働くさまを眺めた。尖った出刃を手にして最初の縄を切る吉どんの手つきを。皆なで寄って群って幾条かの縄を解く腰つきを。開かれる薦包を。

こうした場合にも真勢さんは強いて自分が先に立って皆の差図をしようとしなかった。大抵のことは若いものの為るままに任せているらしかった。そして荷物の送状を調べる方なぞに廻っていた。日頃一風変っているところから「哲学者」の綽名で呼ばれているこの大勝の帳場に接近して見て、捨吉は真勢さんという人にいろいろなものが不思議と混り合っているような性質を感じて来た。勤勉と無精と、淡泊と片意地と。捨吉はまた真勢さんが商法上のことについて、新どんや吉どんが有つような熱心をも興味をも有っていないことを発見した。

しかし真勢さんは何となく捨吉の好きな人だ。東京の田辺の家の方に出入する多くの人達の中では捨吉は一番この真勢さんを好いた。一緒に店の入口の方へ行って、細長い腰掛を半分ずつ分けることを楽しく思った。