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ふくろうのめ

梟の眼

大倉 燁子

「キング 一三巻三号」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,354 字 · 23 页

青空文庫

薄墨色の女

でしまえばそれぎりで、品物に執着がないのだから、持主の住所を調べては、送り返してやる。まさか、平松子爵の次男がスリだとは何人も感付かないだろう、知っているのは妹一人位のものだと彼は考えていた。しかし、その愉快な遊戯も、陽子が梅田家へ嫁いだ日を限りに、きっぱりとやめたはずである。が、もしも盗癖というものが血統にあるのだとしたら――、知らぬ間に心のどこかに芽生えていたとしたら――、と、考えると、彼女は身も世もあられぬほど苦しくなった。

薄墨色の女

警察から喚出された夢を見て、陽子は眼を覚ました。ガーゼの寝巻は汗で肌にはりついている。

夫は起きて、新聞を読んでいた。何か出ているのではないか知ら、と思って、上目使いに顔色をうかがった。

「何だか、寝言を云ってたよ」

ギョッとして、面を反向け心を落付けてから、何気なく、

「新聞に――、何か面白いことでも、出ておりまして?」と訊いた。

「ウム。『省電の通り魔』ッて題で、スリの一味が就縛された記事があるが、それを捕えた山梨刑事の写真が出ているんだ、この男、この間会社へやって来て、僕と暫時話したからよく知っているんだがね」