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ふくろうのめ

梟の眼

大倉 燁子

「キング 一三巻三号」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,354 字 · 23 页

青空文庫

ポケットのダイヤ

ポケットのダイヤ

陽子は珍らしく早起きして、朝のお化粧もすませ、ヴェランダの籐椅子にながながと両足を延ばし、ココアを飲みながら、頻りに腕時計を眺めていた。

客間の置時計が九時を打つと、それを合図のように玄関のベルが鳴って、貴金属商の杉村が来た、と書生が取りついだ。貴金属商というのは表面で、実は秘密に婦人達の間を廻り歩いている、損料貸しなのである。指輪や時計の交換などもやるので、重宝がられているのだった。彼は如才ない調子で、お世辞を振りまきながら、女中が茶菓を運ぶのに出たり入ったりしている間は、ゆっくりと鞄から一つ一つ指輪を取り出して、テーブルの上に並べていたが、女中の姿が見えなくなると、懐中から別に持っていたのを出して、

「パリーで買ったものだというんですが――、カットも新しいし、これだけの上物は滅多にございません。――いかがでしょう? 二千五百円じゃお安いと思いますが――」

三キャラット以上もありそうな、純白ダイヤ入りの指輪だ。陽子は蝋細工のような細い指にはめてみて、じっと眺めた。欲しいな、と思った、欲しい! しかし、この指輪に換えるだけの宝石を、残念ながら、持ち合せていない。