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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 页

青空文庫

――いかがでしたか。

甲斐はめがおでそうたずねた。安芸はそれに答えるように、ゆっくりと二度、頷いてみせた。まもなく柴田外記が戻って来、次に古内志摩が呼ばれた。甲斐が呼ばれたのは志摩のあとだったが、審問は簡単に済み、四半刻ほどすると表て座敷へさがった。そこでまた安芸が呼ばれたのであるが、安芸は立ってゆくまえに、甲斐から外記、外記から志摩へと、順に顔を見ていった。火を発するような視線で、口はかたくひきむすばれ、その顔にはもう疲労のかげもなく、精悍な決意があふれていた。

「柴田どの古内どの、ひと言うちあけましょう」と安芸は力のこもった低い声で云った、「私は故人の茂庭周防と、ここにいる船岡との協力で、一ノ関の陰謀とたたかって来た、どうたたかって来たかは話すにも及ぶまいが、敵は一ノ関だけではなかった、まことの敵は大老酒井侯であり、侯の目的は伊達六十万石の改易にあった」

外記は訝しそうな顔をし、志摩は驚愕の眼で甲斐を見た。甲斐は黙って、向うに安芸を待っている、申次の大井新右衛門を見やった。

「もしもこの屋敷から、生きて出ることができたら仔細を話そう」と安芸は続けた、「この真相がもれたら、家中は収拾のつかぬ騒動になり、内部から崩れ落ちたに相違ない、それをおそれてこなたたちにも内密にしていたのだ、しかし私はこの評定で酒井