轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 页

青空文庫

七十郎の顔から、冷笑と、皮肉な色が消え、彼は持っている盃をみつめた。

甲斐と、大鹿と、久兵衛。

追う者と追われる者と、三者が一つに対決したとき、生と死が逆転した。もしもふじこの云うとおりなら、と七十郎は心のなかで思った。どうして生死が逆になったのだ、久兵衛はなぜ甲斐を射たずに、くびじろを射ったのだ、彼は甲斐を跟け覘っていたのだし、甲斐は角にかけられて、死を待つばかりだった、というではないか。

それなのに、どうして久兵衛は、甲斐を射たずに鹿を射ったのだ、どうしてだ、館主とその領民という関係からか。いや、それなら初めから、鉄砲を持って跟け廻すなどということはしないだろう。そうだ、おそらく理由はあるまい、引金を引く瞬間には、久兵衛はなにも考えてはいなかったろう。銃口はしぜんに動いたのだ、その刹那に、なにかの「力」なにかの「意志」といった、眼に見えないものが久兵衛を支配したのだ。七十郎はそんなことを思いながら、実際には、頭のなかでまったくべつのことを考えていた。彼は黙って酒を飲み、ふじこは訝しそうに、急に沈黙した彼を、眺めていた。

十左が戻り、鷺坂が戻ったとき、七十郎の表情はまったく変っていた。