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はしのした
橋の下
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,189 字 · 25 页
火は岸の下で燃えていた。水のない河原の岸よりで、近づいてみると、そこは土合橋の下であった。若侍はもっと近づいてゆき、そこに人のいるのを見て、河原へおりた。焚火は土合橋の下で燃えており、その脇で二人の老人がなにかしていた。よく見ると一人は男、一人は女で、焚火には鍋がかけてあった。
老人のほうでも、彼が近づいて来るのを見ていたらしく、彼が立停ると、穏やかな声で呼びかけた。
「お見廻りでございますか」
「いや」と彼はあいまいに口ごもった。
老人は彼のようすを眺め、それからまた云った、「これからがいちばん凍てる時刻です、よろしかったら、こちらへ来ておあたりになりませんか」
若侍は迷った。かれらが乞食だということがわかったからである。だが、それはただの乞食ではなく、城下では「夫婦乞食」といって、数年まえからかなりひろく知られていたし、彼も幾たびか見かけたことがあった。――かれらはいつも二人いっしょだった。ほかの乞食とはちがって、身妝もさっぱりしており、人の家の勝手口で残った冷飯や菜を貰うほかには、道ばたで物乞いをすることもないし、銭などには決して手を出さなかった。