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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

05 第五部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页

青空文庫

」

「ええ、はじめのうちは、いつもこんなふうですよ。五分や七分はたいていおくれます。」

「すると、起こしてまわるほうが早いですかね。」

「そうかもしれません。しかし、それはやらないほうがいいでしょう。板木で起きる約束をしたんですから。」

「じゃあ、やはり打ちつづけるよりほかありませんね。」

「打ちやめると、それでかえって起きることもありますがね。」

「なるほど。……ふん。……そういうものですかね。……あるいはそうかもしれない。」

大河は、ひとりごとのように、そう言いながら、やはり打ちやめなかった。そして、相変わらず板木に眼をすえ、

「ぼくたち、学生時代の学寮生活を自治だなんていって、いばっていたものですが、本気にやろうとすると、実際むずかしいものですね。」

「ええ、結局は一人一人の問題じゃないでしょうか。」

「ぼくもそうだと思います。命令者に依頼する代わりに、多数の力に依頼するんでは、自治とは言えませんからね。」

次郎は大河の横顔を見つめて、ちょっとの間だまりこんでいたが、ふと、何か思いついたように、

「ちょっとぼくに打たしてみてください。」

大河は板木を打ちやめ、けげんそうに次郎のほうをふり向いて槌をわたした。