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しょうごのさつじん

正午の殺人

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第一〇号」1953(昭和28)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,888 字 · 28 页

青空文庫

アケミも文作も彼らが立去る時にラジオの鳴っていたのをきいていた。アケミはよほどラジオをとめて出ようかと思ったが「彼らの便宜のために」わざとラジオの音を残して立去ったのだと云った。

「寛大なもんですな」

と新聞記者が感服したら、

「私までコッパズカシイからよ」

と意味深長に微笑した由、さる新聞の報ずるところであった。

木曾はこう証言した。

「僕が邸へ戻ったのは、十二時五分ごろじゃないかな。なぜなら、神社の前に自転車をとめて、これから丘を登るために一休みしてるとき正午のサイレンをきいたからです。電話ですか、電話は知りませんでしたね。なんしろ荷物を台所へほうりこむ。いきなりマキ割りをはじめたものですから」

彼は二十七歳。終戦の時は学徒兵だった美青年である。彼は新聞記者に男色方面の突ッこんだ質問をうけたが、それを平然とうけながして、

「僕は先生の弟子で、書生で、下男にすぎませんよ。その他のことは知りませんね。え? 愛人? 先生の愛人ならアケミさんでしょう。え? 安川久子さんと先生との関係ですか。そんなこと知るもんですか。僕には、神田先生の私生活は興味がなかったです」