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しょうごのさつじん
正午の殺人
「小説新潮 第七巻第一〇号」1953(昭和28)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,888 字 · 28 页
それによると、木曾はFから約七哩のQ駅のマーケットまで洋モク洋酒その他を買いにでかけているのさ。彼がフィルムを買った写真屋はこう証言してるね。木曾さんが見えられたのは十一時前後でしたろう。現像したフィルムと新しいのとをポケットへねじこみ四五分ムダ話ののち自転車で立去りましたよ、とね。QとFの距離は自転車で三四十分だね。もっとも競輪選手なら二十分以内でぶッとばすことができるかも知れないが、一番普通に考えて木曾が当然の時刻にQで買物していることは彼自身の証言通りと考えていいね」
「木曾の行動で疑問なのは坂で僕らとすれちがってからの何分間だ」
「それは各紙がもれなく論じていることさ。僕は目下各紙の調査もれを考案中で――もっとも、各紙の調査もれは君の調査もれでもあろうから、君に訊いても要領を得ないだろうね。君がF駅へ下車した十一時三十五分以後のことを語ってくれたまえ」
「神社の前で安川久子と言葉を交した以外には道で特別のことはない」
「神田邸では?」
「呼鈴を押すとアケミさんが現れて広間へ通してくれた。アケミさんはマントルピースの上から原稿をとってくれて、サンドウィッチとコーヒーを持ってきてくれたから、二人でそれを食って……」