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せいぎ

正義

浜尾 四郎

「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,327 字 · 43 页

青空文庫

否、仮りに、法廷に於いて立証し得ないでも、あなたの前で立証する人があれば、あなたはますますその所信を強くし、従って力ある防御が出来るわけでしょう」

「あたり前さ、そんな事が出来る人さえ居れば文句はないんだ」

「では云いましょう、衣川さん、森木国松は無罪ですよ。彼の自白は真実です。安心なさい。そうしてあくまでもあなたの信ずる方向に進んでいいんです」

「何? 君、なんだって?」

清川の言葉は青天の霹靂の如くに衣川を驚かした。

「そうです。僕は或る男を知って居るんです。その男は僕の親友です。その男があの事件の推移を見て知って居るのです」

衣川はとび上るように椅子から立ち上った。そして清川の肩に手をかけながら、

「おい君、そりゃほんとか。え、ほんとなら一刻も早くその男に会わせてくれ」

と叫んだ。

「まあ、驚かずに落付いてきいて下さい。実はその為に今日はここに来たのですから」

「おい君、なんだって今まで黙ってたんだ。もっと早く来てくれればよかったのに! 然しああ、やっぱり君は僕の親友だった。君は信頼すべき人だった。その為に今日わざわざ来てくれたのか。ありがたい、感謝するよ」