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せいぎ
正義
浜尾 四郎
「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,327 字 · 43 页
警察で厳重に調べられてから、不思議にも森木は全く自分の犯行であるという事を自白した。
彼の自白によれば、彼が強盗殺人者として起訴されるに十分値して居るのだ。前夜子爵に命ぜられて煙草を一〇三号室にもって行った。その時、子爵はベッドに入ったまま、紙幣の束を勘定して居た。金に困って居た奴にはこれは甚しい誘惑だったのだ。然し流石に子爵を殺してその金を取ろうという勇気もなく、黙って戻って来たが、一時頃、眠ろうと思って便所に行く時、偶然一〇三号の室の前を通ると、戸が五分程開いて居る。さては中から鍵をかけるのを忘れたな、と思った時、彼にはさっき見た紙幣の束が目の前に浮んで来た。金に困って居た彼にとっては之はたしかに容易ならない誘惑だった。何ものかに引ずられるようにして森木は室内にしのび込む。スタンドの薄明りで子爵の枕もとには腹をふくらました札入と一挺のピストルが目についた。するすると進んで彼が札入に手をかけた刹那、子爵がふと目をさました。そうして誰だ! と一声叫びながら、紙幣束をとり返そうとして手をのばす。夢中になって森木は側にあったピストルをとるより早く、のしかかるように子爵の頭部に銃口を押つけて一発放った。