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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
その生命の策略の不思議さにも、かの女はつくづくうたれて仕舞うのである。
かの女と逸作が用事の外出から帰って来ると、取次のものが少し興奮した調子で、
「巴里の坊っちゃんのお知合いの画家がいらっしゃいました。なにしろ東京駅へ着き立てに直ぐ来られたので、鞄もそのまま持っていられました」
かの女の胸に、すぐそれが巴里前衛画派中今は世界的大家であるK・S氏であることが判明した。
「一人で? それとも奥さんと………」
「女の方もご一緒でした」K・S氏は新婚旅行の筈である。
取次のものは、K・S氏が携帯した巴里のむす子からの紹介状を差し出した。
それには態と公式めいた簡潔な文で、先頃お知らせしたK・S氏をよろしくと書いてあった。
「で、その方達をどうしたのよ」
「よく運転手にそう云ってTホテルへお送りさしときました。只今、ご主人も奥さまもお留守のことをよく申し上げて」
何となく機嫌のよくなった逸作が、持前の癖を出して若者を揶揄いかけた。
「よく申し上げたとはどうかと思うね。辛うじて申し上げた程度だろう。なにしろ初等科のフランス語ではね」
「いえ、お二人とも英語でお話しでした。