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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
もしそうならばと、かの女はまた心配になった。今度逢った時、取り付きにくくはあるまいか、はにかむような想いをさせられはしまいか。しかしすぐかの女は、やっぱり自分の求める通りむす子に踏み込めばいい、あの子はあの子であることに絶対に変りはないと、直ぐ自信を取り戻した。公園の出口へ来た。かの女は夫人に云った。
「あまり歩いてはお疲れでしょう。もう車で参りましょう」
展覧会場は満員だった。逸作の働いた紹介の方法も効果があったには違いないが、巴里の最新画派の作品を原画で観るということは、人々には稀有の機会だった。
オリーブ色の壁に彩色画が七八点エッチングが三十点ほど懸け並べられてあった。その前には人々は折り重なって覗き込んでいた。夕刻近いシャンデリヤの仄白い光は、人いきれで乳白に淀んでいた。植木鉢の棕櫚の葉が絶えず微動している。押し合って移って行く見物の列から離れて、室内には三々五々塊を作って画家らしい連中が立話をしていた。
K・S氏夫妻は見物に来た滞在フランス人に捕まって、何かしきりに話している。逸作は入口に待ち合せていた美術記者と、雑誌に載せる作品の相談をして室内を歩き廻っている。