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みずのしたのいし
水の下の石
山本 周五郎
「新武道」1944(昭和19)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,791 字 · 28 页
ものだ、せっかちな人間と悠暢な人間が結びつき、陰気な男と楽天的な男がよく気が合う、しかしそういう違いは表面のことで、本質的には必ず共通する点がある、つまり互いに同じ感情をもちながら表現の相い異なる者が親友になり易いのだ。大七は積極的な性質でぐんぐん前へ出ることを好む、小弥太は幼い頃から挙措が鈍重で、言葉つきもはきとしない、かれはすばらしく張り出た顎をもっていて、「あご」という綽名をつけられたが、それがいつか「能なし」という意味に通ずるほど凡々たる存在だった、大七はかれのなかに秀でた気魄のあることを信じたので、いまに本領をあらわすぞ、と思っていた、――世間の眼にはみえないが晩成の質だ、やがてはみんなのあっというときが来る、そう思って表から裏から小弥太を庇い励ましてきた。小弥太は成長したが少しも変らなかった、平常でも戦場でも人の後手ばかりひいて損をする、このあいだに大七はたびたびの戦陣で功名をたて、殊にさきごろ長篠ではかくべつの手柄があったので十人がしらに挙げられたが、小弥太は今なお鉄砲組の兵にすぎない、そして年はもう二十二歳である、こんどの興福寺攻めは小勢の合戦なので、この機会にこそと思っている