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すいちゅうのかいじん
水中の怪人
山本 周五郎
「少年少女譚海」博文館、1939(昭和14)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,922 字 · 18 页
そこでこれまでは浮流水雷とか、機械水雷などが防備用に使われ、攻撃用には、魚形水雷がひとつであった。けれど前の二つは、敵艦がふれなければ用をなさないし、魚形水雷は発射するために多くの危険がある。……もし水底から、正しい照準で弾丸を発射することができ、それが充分の威力をもっていたら、攻撃にも防備にも、最もすぐれた武器と云えるだろう。私は――誰にも秘密で、その水中砲を研究していた。現在ではほぼ完成に近いところまできている。ところが津川の奴は、いつかこの研究をさぐりだしたとみえて、去年の十月の或る夜、研究所へしのびこんで、その設計図を盗みだそうとしたのだ」
「――それで、ここを出たのですね」
「私が追出したのだ」
「よく分りました」文吾は考えぶかくうなずいて、
「恐らく津川は、啓吉君を誘拐して、その設計図を社長から奪いとろうというのでしょう。――しかし、それにしても、『河童』の謎はどういうものでしょう。越前堀の事件、月島沖の事件、それから霊岸島の肉屋の事件、この三つは、啓吉君の場合と関係はないのでしょうか」
扉があいて、給仕が入ってきた。
「――速達です」
と云って差出したのは、一通のあくどく赤い封筒だった。