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すいちゅうのかいじん
水中の怪人
山本 周五郎
「少年少女譚海」博文館、1939(昭和14)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,922 字 · 18 页
横浜沖にかかっていたので、水上署からもランチがきた。――しかし二時間あまりの努力も、ついに得るところはなかった。文吾はその捜索のあいだ――もしや彼奴の仕業ではないか――と思って、例の職工服の青年にそれとなく注意しているのだが、彼は始めから終りまで、冷やかに、甲板の隅で煙草をふかしながら、この騒ぎを見ていただけであった。
船内にいないことが分ると、「葵丸」は出帆しなければならない。そこで文吾は泣きしずんでいる良子とともに、横浜水上署のランチへ乗りうつった。――水上署ではなお、附近の海上捜索をつづけてくれることになった。
けれども、それもついに無駄だった。
――河童の第四番目の犠牲者!
という悲しい結果だけをもって、文吾と良子は、その翌る朝八時、東京へかえった。
水圧工業会社の社長、鹿島銀造の家は京橋明石町の工場に接して建てられている。――二人が帰ったとき、朝の早い社長はもう工場附属の研究所へ出ていたので、文吾は良子を寝るようにすすめておいて一人で研究所の方へいった。
「なんだ、大島ゆきはよしたのか」
文吾の顔を見て社長は驚いた。
「出かけたんですが、ちょっと……」