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えいきゅうへいわのせんけつもんだい

永久平和の先決問題

大隈 重信

「大觀 第二卷第一號」大觀社、1919(大正8)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,090 字 · 22 页

青空文庫

とはいえこの誤りは必ずしもカイゼル一人が初めて経験した訳でなく、長い歴史が既に侵略的植民政策を取って来ていたものであった。優秀な文明が劣等の文明を支配することを一種の権利の如く考えて来たことは甚だ久しいもので、その極端なるものに至っては、宗教と結んで自己を以て神の特殊の使命と恩寵とを併せ受け、この世の全人類を統治する権利を与えられたものと考うるにも至った。かの羅馬法皇が神の如き威厳を持した全盛時に於ては、自ら経緯度に依って地球面を区画し、南部は羅馬、西部は西班牙、東部は葡萄牙を以て支配すべく、これ神意に依って定められたるものと考えた如きが即ちそれであった。この様な僭越な思想の行われた時代に、列強はしきりに植民政策を競ったので、その手段は甚だ残忍酷薄を極め、南阿辺の土人をば宛然兔狩の如くに狩り立て、これを奴隷として国外に輸出する。即ち奴隷売買が盛んなもので、人間をば貨物と同一に価を上下して取引し、これを北米、南米等の諸国に送る。西班牙、葡萄牙等が独りこれを行ったばかりでなく、英も仏も皆当時はその顰に倣って同様な非人道的なことを行っていたものであった。