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えいきゅうへいわのせんけつもんだい

永久平和の先決問題

大隈 重信

「大觀 第二卷第一號」大觀社、1919(大正8)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,090 字 · 22 页

青空文庫

これが即ち流れて後の戦国時代の露骨なる、単に攻伐を目的とする合従連衡の素地を成したものである。されば斉桓公が鄭伯と会して武父に盟い、旧盟の宋を伐つや、左伝にはこれを評して、「君子の曰く、苟も信継がずんば盟も益無きなり。詩にいう、君子屡々盟う、乱これを用て長ずと。信無ければなり」と言っている。誠にその通りである。誠実が持続するで無くては、百千回の盟約もなんらの効は無いんである。そこで詩の小雅には、君子が屡々盟うのは屡々盟わねばならぬ必要有るからの事で、その必要の有るは誠実の欠けたるを証する。既に誠実の欠けおる会盟が何の役に立とう。その度数を重ねれば重ねるだけ乱は益々長ずるばかりだといっている。左伝にはこの詩句を引用して、「信無ければなり」との評語を着けて結んでいるが、至言誠に吾人を欺かざるものだ。即ちかくの如き政略的会盟が当時の斉桓晋文の徒の間に盛んに行われたが、真の平和は決してこの中より出現せなかった。さればこそ彼等を覇者と貶称し、誠実に仁義を行わんとする王道とはこれを甄別したゆえんである。覇者の目的は表面は如何に仁義を粉飾しても、自己を強大にし他をその権力の下に屈せしむるに在るのだから、目的のためには如何なる手段をも選ばざらんとする。