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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
しかし私を撫すった時の嫋かな手付きを考えて見るに男のようには思われない。それでは土人の女だろうか?
「土人の女がこの俺のような支那の若者をこう熱心に保護してくれる所以がない」
こう思うにつけてもいよいよ私はその恩人を一目なりとも見たい希望に燃え立った。
その日も林で一日暮らして三日目の昼頃になった時少し林がまばらになって空の蒼味と陽の光とがいくらか仰がれる小丘へ出た。見るとその丘の頂きに三本の樫の木が立っていて、二丈あまりの高い所に風雨に曝らされた木小屋が一ついかにも厳重に造られてあって、丈夫な縄梯子が掛かっていた。小屋の古さに比らべて縄梯子はまだ新らしい。私は丘へ上って行って注意深く小屋を見上げて見た。その構造でその小屋が猛獣狩りに用立てるためずっと昔に造られたもので、今はもう誰もその小屋には住んでいないという事が感じられた。猛獣狩りの小屋だけに素晴らしく厳重に造られてある。四方の板壁には規則正しく三つずつの銃眼が造られてあるし正面の扉などは錆びてこそおれ鉄の一枚板でつくられてある。
私は念のため小屋に向かって幾度も呼んで見た。もちろん答えるものもない。