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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
そこで私は決心してそろそろと縄梯子を上って行った。小屋の内には予想した通り人間の住んでいる気配もない。ガランとして空虚である。熱帯蜘蛛の大きな網が到る所にかかっている。床には塵埃が積もっている。そして木椅子や卓子が五人前ちゃんと揃っている。室は二つに仕切られてあった。奥の小部屋は寝室と見えてボロボロの寝具が敷かれてある。
「五人の勇敢な猟師どもがボルネオ虎や猩々や馬来種の猪を獲るためにこの小屋の中に閉じこもって銃眼から猟銃を発ったものらしい。沢山獲物が出来たので小屋をそのまま放擲ってどこかへ立ち去って行ったのだろう。風雨に曝らされた板壁の様子や床に積もった塵埃から推すと、三年、五年、もっと以前から小屋は造られてあったものらしい」
こう思いながら尚私は室の様子を見廻した。すると今まで気が付かなかったが室の片隅のテーブルの上に、果実がうず高く積んであって椰子の実で拵えた椀の中に飲料水さえ盛ってある。ちょっと驚いて眼を見張ったがそれでもすぐに感付いた――
「眼に見えない例の恩人」が昼食を送ってくれたのだろう。
そこで木椅子へ腰掛けて味の好い賜り物を頂戴した。