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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
私達二人は沼の岸を静かに歩いて進んで行った。キキ! キキと木の梢で悲しそうな声で鳴くものがあるので何気なく仰いで梢を見た。眼玉の飛び出た鰭の長い八尺あまりの鯊のような魚が鰭で木の幹を攀じながら悲しそうに鳴いているのであった。
私達は尚も彷徨って行った。鰐の住む濁った河を渉り鴨嘴の群れている湿地を越えて足に任せて彷徨った。
またも森林が途絶えて、前方遙かに砂丘が見え、熱帯の太陽が赧々と光の洪水を漲らせている何んとなく神々しい別天地が私達の前へ展開した。
光の洪水に洗礼されたその前方の砂丘の上には一個の祠が安置されてあってあたかもそれを守るかのように石で刻まれた狛犬が、肩に焔を纒いながら祠の前に坐っている――その光景を眺めた時、私は卒然と羅布の沙漠の緑地で見た同じ祠を頭の中に描き出した。
「おお何んと同一ではあるまいか! ……ロブの沙漠のあの祠とボルネオの奥地のこの祠とは!」
私は感激に胸を顫わせ釘付けのように突っ立ったままじっと祠を眺めていた。すると私のこの感激を一層高潮に誘うような不思議な事件が突発した。それは、今まで梢の上で私達を守っていた人猿達が、祠の姿を見るや否やバラバラと梢から飛び下りて人間のようにひざまずいて祠を遙拝することであった。