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ほうそうやわ
法窓夜話
穂積 陳重
02 法窓夜話
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,325 字 · 264 页
かくの如き成功に接して、最も歓喜した者は、ベンサムの父であった。子に叱られた事までも吹聴して歩きたいのは親心の常であるから、当然我が愛子の頭を飾るべき桂冠が、あらぬ方へのみ落ちようとするもどかしさに、とても堪え切れず、我子との固き約束をも打忘れて、遂に自ら発行書肆を訪ねて、第二版には必ずジェレミー・ベンサム著と題してくれよと頼んだ。書肆はなかなか応じない。この書がかく売行の多いのは全く匿名の故である。余り高名ならざる御子息の名を載せたが最後、忽ち人気が落ち声価の減ずるは眼のあたりの事と、すげなくもこれを拒絶したのであった。しかるに、この事が忽ち世上に伝わると、如何なる大家の説かと思えば、そのような青二才の著作であったかと、世人の失望は一方ならず、書肆の予言は見事に的中して、第二版の準備も終に中止となってしまった。
ベンサムは後に自らこの事を記して、「我父約を守らざりしがために、この書の著者は何人にも知られざる或人」(Somebody unknown to nobody)なりと知れ渡るや否や、書肆の門前は忽ち雀羅を張れりといっている。けだし「年少何の罪ぞ、白髪何の尊ぞ」