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ほうそうやわ

法窓夜話

穂積 陳重

02 法窓夜話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,325 字 · 264 页

青空文庫

三四 カランの法術

昔街頭にマーブルを弄んだ貧児は、今や演説壇上満堂の視線を一身に集めている。風発、説き来り説き去って、拍手喝采四壁を撼かす時、傍聴席上の一老僧はソーッとハンケチをポケットから引出して目に押当てた。

この雄弁なる国会議員こそ、実に我が大岡越前守とひとしく、幾多裁判上の逸話を遺したる著名の弁護士カラン(Curran)その人であった。

三四 カランの法術

英国の一農夫、或る宿屋に泊って、亭主に百磅の金を預け置き、翌朝出発の時これを受取ろうとした。ところがこの亭主は甚だ図太い奴で、金などを御預りしたことはないと空とぼける。百姓は大きに腹を立てて厳重に懸合うけれども、何分証拠がないこととて如何とも仕様がない。弱り果てて、当時有名の弁護士カランの許を訪ずれ、どうか取戻の訴を起してくれと頼んだ。カラン暫く思案して、「それ位なことなら訴を起すまでもない、もしその百磅を取り返したいならば、もう百磅だけ改めて亭主に預けるがよい」という。百姓は仰天し、「飛んでもないこと、渠奴のような大盗人に、百磅は愚か、一ペニーたりとも渡せるものか」と、始めはなかなか承知すべき気色もなかったが、遂にカランの弁舌に説き落され、渋々ながら、彼の差図に任せて、一人の友人を証人に頼み、再び例の宿屋に行った。