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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

一体この空気管はどこへ抜けているのだろう。なにしろこう真暗では、何が何やら見当がつかない。

「おおそうだ。――僕は懐中電灯を持っていた筈だ」

帆村は重大なことを忘れていたので、思わず暗中で顔を赧らめた。慌てないつもりでいたが、やはり慌てていたのだ。もちろん生命の瀬戸際で軽業をしているような有様なのだから、慌てるのが当り前かも知れないが……。

「ああ、有ったぞ!」

帆村はいつも身嗜みとしていろんな小道具を持っていた。彼はチョッキのポケットから燐寸函ぐらいの懐中電灯をとりだした。カチリとスイッチをひねると、パッと光が点いた。有り難い、壊れていなかったのだ。眩しい光芒の中に異様な空気管の内部が浮びあがった。彼は元気をとりかえして、ゴソゴソと前進を開始した。

だが、その前進は永く続かなかった。なぜなれば、五メートルほどゆくとそこに円い鉄壁があって、もはや前進が許されなくなった。残念にも空気管はそこで端を閉じているのであった。

「行き停りか――」

帆村は吐きだすように云った。これではもう仕方がない、でも空気は冷え冷えと彼の頬を掠めている。それを思うと、まだ外に抜け道があるに違いない。