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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

「課長の頓死といわれるのは図らずして自分だけで偶然の死を招いたという意味でしょうが、しかしそれに死ぬような原因を他から与えた者があれば、それはやはり他殺なんですからネ」

「すると君は、まだ何か知っているというんだネ」

「もう一つだけですが、知っていますよ。それはあの手提の中にある一つの燐寸です。それは時計印のごく普通のものですがネ。たいへん似あわしからぬことがあるんです」

「なに、燐寸が……」

課長はツカツカと屍体の傍により、傍に落ちていた手提をもって来た。そして中を開けると、なるほど時計印の燐寸箱が入っていた。

「これは至極普通の燐寸だネ。なにも変ったところが認められん」

「そうでしょうかしら」と帆村は首を振って「私はたいへん不思議です。第一このような不恰好な燐寸箱が、そのようなスマートな手提に入っていることが不思議であり、第二には燐寸の赤燐の表面は新しくて一度も擦った痕がないのに、その中身を見ると燐寸の数は半分ぐらいになっているのです。どうです、不思議じゃありませんか」

「ほう――」

と大江山課長は叫んで、燐寸の箱を開いてみると、なるほど不思議にも燐寸の軸木は半分ほどしか入っていなかった。