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りゅうこうさっかのし
流行作家の死
野村 胡堂
「新青年」1932(昭和7)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页
「――――」
「その上、金もふんだんにあるし、一流の作家だし、死なければならぬ理由が何処にあるんだ」
「無い」
「それから、青酸中毒で死んだと言うのに、青酸のビンもコップも無かったと言うじゃ無いか――」
「その通りだ、それが一番不思議だ」
「まだあるよ、自殺を予告すると言う話は聞いたことがあるが、自殺してから新聞社へ電話をかけさせると言うのは例の無いことだ。死んだのは遅くとも十一時で、電話を受けたのは市内版の最初の締切間際だったから、どうしても十一時半だ――」
「――――」
「もう一つ、小栗が死ぬ前に人に頼んで置いて、死んでから電話をかけさせることがあり得るとしても、君を名指して呼んだのは何う言うわけだ、――僕が取次ぐと、子供の声で、早坂勇さんに電話口へ出て下さい――と判然言ったよ」
「――――」
「君は一二度逢っただけで、小栗をよく知って居ないと言ったが、僕は学生時代からの友達だ、小栗は自分の死を関東新報の特種にさせる積りで、誰かに頼んで電話を掛けさせたにしても、呼出すのは早坂勇なる君ではなくて、この千種十次郎でなければならぬ筈だネ、勇そうじゃ無いか」
「うまい、兄貴、御明察だ、関東新報の社会部を背負って立つほどの事はある」