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りゅうこうさっかのし
流行作家の死
野村 胡堂
「新青年」1932(昭和7)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页
「勇、これはどうかしたら事件かも知れないよ、御苦労だが、一と走り行って見てはくれまいか」
「オーライ」
足の勇はその上の注意は聴いて居ませんでした。千種十次郎の話を、半分は後ろ耳に聴いて、オーバーを引っ抱えたまま、サッと廊下へ――、
足で種を取るから「足の勇」と言われる位の男で、用事がありさえすれば夜中だろうが朝だろうが、疾風のように飛出すのが、この男の身上だったのです。
取って二十七になったばかり、某大学を三年前に出て足で種を採るといっても、決して昔の探訪記者と一緒に見たわけではありません。
足の勇が、渋谷の郊外の、小栗桂三郎の家へ着いたのは、それから三十分の後でした。
家の中は深夜乍ら大変な騒ぎ――
名刺を通して、「先刻電話をかけた、関東新報の記者ですが――」と言うと、老人の江藤が出て来て、直ぐ応接間へ通してくれました。
あれからの出来事を手っ取り早く言えば、主人の小栗桂三郎は、矢張り離屋の書斎の中で死んで居たのです。
「どうして新聞社の方へ先に判ったのでしょう」
いくら報道機敏でも、家の者が知らずに居るのに、密閉した離屋で主人が死んで居るのを、新聞社が先に嗅ぎ付けると言うのはあり得ないことです。