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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

只今艦橋は豪雨と烈風にさらされ、全然遠方の監視ができません」

「そうか。苦しいだろうが、大いに頑張ってくれ。なにか見えたらすぐ知らせよ」

「はっ、畏まりました」

それから十分ほど過ぎた。

雨脚が急に衰え、雲が高くなったようである。

艦橋に立つ入野一等兵曹は、行手にあたって、ほの明るい光のかたまりを見出した。夜光の羅針儀の蓋をとってみると、その光物は正に西南西の線上にあった。

「おお、あれこそ飛行島にちがいない」

入野は直ちに電話機をとって、

「艦長へ報告、西南西にあたって、光を放っているものが見えます」

「見えたか。よし、見失わぬように監視をつづけていよ」

「はい、承知いたしました」

電話が切れると間もなく、艦橋の下の昇降口があいて、そこから艦長の丸顔が現れた。あとには先任将校が続いてのぼってくる。狭い艦橋の上は、芋を洗うようにお互の体がぶつかった。

「おお、あれだな」

と艦長水原少佐が、入野のところへよってきて、白い手袋をはめた手をあげた。

「そうであります。望遠鏡でみますと、飛行島の甲板上に点っている灯が点々と見えます」

「そうか。まだ気がつかないのか、一向警戒をしている様子が見えないね。