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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
なにかわめいているが、暴徒だか監視隊だか、さっぱりわからない。その中に、
「無線室はどこだあ」
と、呶鳴って歩いている者がある。
「無線室はここだが、お前は誰だあ」
と応じた声があった。と同時にさっと懐中電灯がいきなり照らしつけられた。
その光の中に現れたのは、あまり背の高くない下士官であった。どうしたのか、制帽を耳のところまで被り、服の上にひっかけている雨合羽は襟を立てていた。
「飛行班のゴルドン兵曹だ。班長からの至急電報を頼みにきた。早くとおしてくれ」
「なんだゴルドンだって? そんな名前の兵曹がいたかなあ」
「うむ」とゴルドンはうなったが、「貴様、俺をからかう気か。よし、そんなら貴様のことを班長に報告してやる」
「ちょっ、気の短い奴だ。別に疑ったわけじゃない。さあ、早くこっちへ入ればいいじゃないか」
と、番兵は折れて出る外はなかった。
ゴルドンと名乗る兵曹は、急足で無線室へとびこんだ。
そのあとを見送った番兵同志の話――
「鼻息のあらい野郎じゃないか」
「うん、失敬千万な奴だ。雨合羽など着こんで、雨なんかちっとも降っていないじゃないか」
全くそのとおりであった。