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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

川上は部下を励ましたり叱ったりした。これにはさすがの杉田二等水兵も一言もない。

「川上機関大尉。私が悪うございました。これからは体を大切にいたします。そしてどんなことがあっても望を捨てず、ご奉公の折の来るのを待ちます。申しわけありませぬ」

病床から、杉田は川上機関大尉の手をおしいただいた。

「うむ、よくいった。ここは敵地だ。焦るな。体力をやしなえ。そして機会がいたったときは、俺と一しょに死んでくれ」

「はい、――」

「杉田二等水兵。もう長話はできぬが、この飛行島もいよいよ近く動きだすぞ」

「えっ、飛行島がうごきだしますか」

「そうだ。試運転をはじめるようだ。貴様もよく気をくばっておれ、いよいよ手を借りるときは、梨花にたのんでお前に伝えるからな」

「はい、よく分かりました」

このとき梨花が、扉をことことと叩いた。誰か来るとの知らせである。

川上機関大尉は、もう一度病床の杉田の手を握りしめ、

「さあ、誰か来た。気づかれるな。俺の硝子入替えの腕前をそこで見物しとれ」

「上官は硝子の入替えにも御堪能でありますか。私はおどろきました」

「うふ、――」

川上機関大尉は、杉田のそばをはなれるとまた元の中国人の硝子屋にかえって、ぬからぬ顔で壊れた窓硝子のパテをはがしにかかった。