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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
試運転は闇夜にかぎるのだ。
いま島内の乗組員、住民達は、みな眼をさましてきき耳をたてているのだった。
そうであろう、耳をすませば、遠い地鳴のような音がゴーッと響いて来るのである。内燃機関がこのようにはげしい音をたてたのは、今夜がはじめてのことだった。
飛行島は、いまや海上を航行しているのだ。いくら堅固につくられてあるとはいえ、さすがに鋼鉄の梁も壁も、気味わるくかすかに震動するのであった。
「あっ、あれは何の音だ」
「いやに不気味な音じゃないか。おや変だぞ、部屋が傾くようだぜ」
部屋が傾くのではない、飛行島が傾くのであった。波浪ははげしく飛行島舳部の支柱を噛んでいる。住民たちの多くは、部屋が傾くのを知って、飛行島が航行しているのに気づかないのであった。
「おっ、飛行機だ」
「一たいどうしたのだろう」
「今夜はどうやら演習らしいぞ」
と、下甲板から顔を出した労働者がいった。
「おや、あの灯はなんだ。うむ、飛行島のまわりをぐるっと取巻いている。軍艦の灯じゃないか」
というのも当っていた。
試運転中の飛行島の空は、六十余機の戦闘機と偵察機とにまもられ、またその周囲は、三十隻の駆逐艦と十五隻の潜水艦によって、二重三重に警戒されているのであった。