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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
「よし、しっかり頼んだぞ」
「では、御無事を祈っています」
「うむ、行ってくる。くれぐれも短気をおこしてはならんぞ。――ああそうだ。俺が行ってしまって、力のないお前が、万一激浪にさらわれてはいけない。そういう危険のないように、お前の体を、この鉄骨にしばりつけておいてやろう」
川上機関大尉の心は、どこまでも注意ぶかく、そして傷つける部下の身の上にやさしかった。
小暗い下甲板
川上機関大尉は、半裸体に、日本刀を背中に斜に負い、組立鉄骨をのぼっていった。
鉄骨の表面は、海水にじめじめと濡れていて、リベットに足をかけると、そのままずるずると滑りおちて腕をすりむいたり、足の生爪をはがしたり、登攀はなかなか容易な業ではなかった。それでも三十分あまりの後、彼はとうとう最下層の甲板までたどりついた。
甲板の隅で、川上機関大尉はしばらく息をいれていたが、そのうちに元気をとりかえしたものと見え、その狭い通路を匐うようにしてそろそろと場所をうごきだした。
すると、真正面から、いきなりあらあらしい足音が近づいた。
川上機関大尉は、はっと体を縮めるなり、飛鳥のようにカンバスのうしろにとびこむと、そのかげに平蜘蛛のようにぴったりとはりついた。