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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

そして彼の眼は、ときどきちらりと足許に転がっている日本刀の方へうごいていた。

川上機関大尉は、いま何を考えているのであろうか。

飛行島戦隊は、この騒をよそに、風雨荒れ狂う暗闇の南シナ海をついて、ぐんぐん北上してゆくのであった。

消えぬ怨

「リット少将!」

提督は、わが名を呼ばれてびっくりした。その声は少女の声であった。

「リット少将!」

また呼んだ。

リット少将は、その声のする方を見た。そこは真青な海原だった。絵に描いたような美しい夜の海原だった。少女の声は、すぐ下の波の間から聞えるのだった。

「誰か?」

「私です」

それは聞いたことのある声だった。しかしリット提督には、声の主の姿が見えなかった。

(不思議なことがあればあるもの……)

提督は念のために舷のところまで歩いていった。そして舷側につかまって下を見た。

「おお」

提督はぎくりとした。

舷側を洗う白い飛沫の上に、一人の少女の寝姿があった。梨花だ。中国少女の梨花だ。鋼鉄の宮殿の中を、栗鼠のようにちょこちょこととびまわって、雑用をつとめていた梨花の姿だった。

「梨花か。なぜそんなところに寝ているんだ。波にさらわれてしまうではないか。