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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
誰もみな沈痛な顔をしていて、一語も発する者がなかった。
「本当に脱艦したものだろうか。脱艦したとすれば、どこからどういう風に脱艦したものだろうか」
と、長谷部大尉は、誰に問うともなくそういった。
「遺憾ながら、私はなんにも知らないのです」
分隊長は首をふった。
「あの――、杉田は、艦側から、海中にとびこんだのであります」
と、誰かうしろの方で大声で叫んだ者があった。
「なに、艦側から? よく知っているのう。おい、誰か。もっと前へ出て話をせよ」
分隊長はのびあがって、このおどろくべきニュースを報道した者の姿をさがした。
「はっ、――」
と答えはしたが、その先生は急に頭をかいて、こそこそ逃げ出そうとする。その姿を見ると、外ならぬ大辻二等水兵だった。
「なんだ、大辻じゃないか。早くこっちへ出て当直将校の前で話せ」
大辻はもじもじしながら長谷部大尉の前に出てきた。
「ははあ、お前か。――」
長谷部大尉は呆れた。村の鎮守さまにおしゃべりをしない誓をたてたといった例の大男である。杉田の脱艦したことを自分がしゃべったことは、ないしょにしておいてくれと、さんざん頼んでいったその大辻二等水兵だったから、これが呆れずにいられようか。