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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

「こら、待て。撃っちゃならん」

とリット少将が叫んだ。しかし時すでにおそかった。

だだーん。

銃声は轟然と、あたりにひびいた。

「あっ、――」

舷の端へもう一歩というところで、杉田はもんどりうって転んだ。そしてそのまま甲板を越えて、杉田の姿は消えた。

まっさかさまに海中へ――。

そうなると手錠をはめられた杉田二等水兵は、泳ぐこともできないで溺死するほかないであろう。死は目前にあった。――

が、そのとき不思議な運命が、彼の身の上にふってわいた。

海中へひたむきに墜落してゆく杉田の体が、途中でぴたりと停ったのである。不思議なことが起った。

だが、それは不思議ではなかった。落ちゆく杉田の体を、むずと抱きとめた者がいるのだ。それは一たい誰であったろう。

それは外でもない。頭にぐるぐる繃帯をしたペンキ塗の中国人であった。リット少将とハバノフ氏の密談する塔の屋上で、檣にペンキを塗っていたあの怪中国人であった。

彼はなぜ、命がけの冒険をしてまで杉田二等水兵を抱きとめたのだろう。

諸君! まことに不思議な怪中国人ではないか!

軍艦明石

練習艦隊須磨明石の二艦は、針路を北々東にとって、暗夜の南シナ海を航行してゆく。