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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

そして自分の肩をおさえている手をふりはらって、がばと起きあがった。

と同時に、彼の枕許にうずくまっていたやさしい声の主と、ぱったり顔を合わした。それは外ならぬ怪しい中国人のペンキ工の姿であった。

「おおあなたが」

杉田はそう叫ぶと、傷の痛みも忘れて、その胸にしっかり抱きついた。

「おお杉田。お前はよくやって来たな」

まぎれもない川上機関大尉の声だった。

「す、杉田は、う、う、嬉しいです。も、もう死んでも、ほ、本望だっ」

あとは涙に曇って聞きとれない。

「な、泣くな杉田――。お前が来てくれて、俺も嬉しいぞ」

中国人のペンキ工に変装した川上機関大尉と半裸の杉田二等水兵とは、薄暗い室の隅にしっかりと抱きあったまま、はりさけそうな胸をおさえてむせび泣いた。

すわ曝露?

怪しいペンキ工の謎は解けた。

密命を帯びたわが川上機関大尉は、巧みに変装して、リット少将の身辺をひそかにうかがっていたのであった。

彼がいつも片手にぶら下げているペンキを入れた缶の底には、精巧をきわめた短波無線電信機がかくされてあったのである。

彼は苦心に苦心をして、いろいろなことを探った。そして、たえず暗号無電で、軍艦明石の無電班と連絡をとっていたのであった。