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うみがよんだはなし

海が呼んだ話

小川 未明

「日本の子供」1939(昭和14)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,700 字 · 8 页

青空文庫

「叔父さんの家は、ここから二十里もあちらの浜なんだ。たいだの、さばだの網にかかってくるって、僕のお父さんが、いった。」

「その叔父さんは、また自転車屋をやるの。」と、清吉がたずねました。

「さあ、それはわからないな。」

勇ちゃんの話しぶりでも、遠い浜から、町へ出てくるには、なにか子細があるように感じられたのです。しかし、そのわけは、わかりませんでした。ただ、にぎやかな町から、さびしい田舎へ帰るものと、また、ひろびろとした海の生活から、せまくるしい町へやってこなければならぬものと、人間の一生の暮らしには、いろいろの変化があるものだと、子供たちにも、感ぜられたのでした。

勇ちゃんの家が、田舎へ引っ越してしまってから、しばらく、自転車屋のあとは、空き家になっていました。

「いつ、勇ちゃんの叔父さんは、引っ越してくるんだろうな。」と、正二も、清吉も、閉まっている家の前を通るたびに、振り向きながら思いました。そのうちに大工が入って、店の模様を変えたり、こわれたところを直したりしていましたが、それができあがると、いつのまにかこざっぱりとした、乾物屋になりました。そして、チンドン屋などがまわって、開店の披露をしたのであります。