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きえたミジアム

消えた霊媒女

大倉 燁子

「オール讀物 四巻一一号」文芸春秋、1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 页

青空文庫

笑う時にちょっと口を曲げるところから理智的に輝いている眼、口尻に小さい黒子のあるところまでほんとによく似ています。

私は妻の招霊をさにわから頼んでもらいました。霊媒女は眼を閉じ、姿勢を正して合掌していましたが、少時するとすっかり態度が変って、妻に似た容子になり、懐しそうに摺り寄って来ました。霊媒女の体に妻の霊が乗り移ったとでもいうのでしょうか。身の態度から声音まで妻の生前そのままです。妻の霊は私の手を握って喜んでくれました。その手が大変に冷たく、妙にひやりとした感じが、後になっても忘れられませんでした。

私はいろいろ話かけてみましたが、他人という感じはなく全く妻と会っているような気持がして、嬉しさのあまりすっかり夢中になってしまいました。軈て妻の霊は去ってしまいましたが、私は呆然として暫時は全く夢を見ているような気持でした。

『お話がお出来になりましたか?』

霊媒女はそう云って、にっこりと笑いました。ああその顔! 夢から覚めてもその顔は全く妻の顔でした。私は嬉しくって胸が一杯になり、ただこの不思議な霊媒女に対して深い感謝の意を表しました。

往来へ出ても私は足も宙に歩いていました。