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きえたミジアム
消えた霊媒女
大倉 燁子
「オール讀物 四巻一一号」文芸春秋、1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 页
実際気が狂っているのかも知れません。迷わされているのかも知れません。
しかし迷わされているのでも構いません。妻に酷似の人の口から妻の言葉を聞くのですから、これ以上何を求めましょう。
独りで書斎にいる時もそうですが、時々心中で霊媒女と交した問答を繰り返しておさらいをしながら、思わず独りで笑ったりする事がありました。それを家人はまた変に気を廻して疑惑の眼を絶えず私の身辺にそそいでいるようでした。
しかしそんなことはどうでもよかったのです。私はただ妻と会える、ただそれだけで満足でしたがそれも日を経るにつれて段々と欲が出てきて、ただ逢って、他人を仲介として話しているだけでは、どうにも満足出来なくなりました。せめて霊媒女(名は二三日目に知りました。小宮山麗子と書くことにいたします)と二人限りで直接話してみたいんです。出来る事なら始終傍に置いて好き自由に話したかったんです。
処が偶然の機会から、その希望が達せられることになりました。私は家の体面をやかましく云われるもので麗子のところへ通う時は変名を用いていましたから、家へ直接来てもらうわけには行きません。しかし麗子も独身なり、私も妻を失っているのですから、いざとなれば、結婚してもいいと思っていました。