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しんやのきゃく

深夜の客

大倉 燁子

「モダン日本 九巻一三号」1938(昭和13)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,926 字 · 28 页

青空文庫

方を探し求めなければならない、それが一方ならない困難でした。先生には御迷惑でしょうが、まあ白羽の矢が当ったものと思召して、一肌ぬいで頂きたいのです」

「お話に依っては――、私の力で出来ますことでしたら、何なりと致しましょう」と、快く引受けた。

「私はある死刑囚から世にも気の毒な物語を聞いたのです。独房にいるはずのその囚人から、同じく囚人である私が、どうして話を聞いたかという事は、どうぞ、お訊ね下さいますな。ただその物語りを先生に聞いて頂きさえすればよいのですから、――それで私の義務は終るのです。余計な事は一切省くことにいたしましょう」

「なに、要点だけを承わればよろしいんですよ」

「その死刑囚も、もう疾うの昔、発狂し、自殺を遂げてしまいました」と云って、尾越は少時瞑目した。やがて言葉をつぎ、

「その男を仮りに譲治とよびましょう。――その譲治は米国で生れましたが、両親には早く死別し、兄弟姉妹もなく、全くの独りぽッちでしたので、情のある宣教師に拾われて非常に愛され、やがて一緒に東京へ参り、譲治は学校へ入ったが、言葉もよく通じないし、西洋人の習慣が身についているので、友達になってくれる人もなかった。